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今までに見た舞台の感想をつづってあります。
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題名:アジア演劇講座「知られざる中国現代演劇」
日時:2009年9月16日19:00-21:07
会場:東京芸術劇場5階中会議室(池袋)
講師:菊池領子
URL:http://www.rproduction.com

☆中国の文化政策と演劇の状況

・中国現代劇は、1907年在日中国人留学生が東京で組織した春柳社の公演が起点とされる。
 日本の新劇の影響を受けて始まった。中国語では現代劇を「話劇」と言う。
 参考図書「文明戯研究の現在」「中国話劇成立史研究」東方書店

・1949年新中国の登場。毛沢東曰く「文芸は社会主義及び人民に奉仕するもの」
 劇団は選ばれた人により構成する団体であり、職業演劇人として芝居をやっていた。
 各地域ごとに公営劇場があり、劇場付きの劇団があるという、地元密着型であった。
 北京人民芸術劇院という劇団の「茶館」という作品が有名。1958年初演83年日本公演。
 中国の近代の歴史をすべておさめたような三部構成の芝居。
 なにを見る?というとまずは「茶館」というくらいスタンダードナンバーになっている。
 ただし言葉は庶民の言葉を書き移しているので外国人には聞き取りが難しい。
 天津でも「蟋蟀賭博の若旦那」という天津を描いた作品がある。賭博で遊んでばかりいる
 息子を母親がいさめる話で、天津の言葉で演じられている。

・1978年の改革解放が契機で公営劇場に小劇場が誕生。
 もっとも広さに対する感覚が日本と異なるので、小劇場といいながらも300名くらい
 はいれるようなところが多い。
 「非常信号」(原題:絶対信号)の成功がエポックメイキングであった。
 それまでは時代ごと時間順に動いていた芝居ばかりだったが、この作品は回想がはいる
 などして、時間と空間がうごいた。
 小劇場といっても演劇の精神や形式の自由を追求する方向であった。場所が公営劇場
 なのでアングラ・反体制はない。

・2000年前後は作品に同じような繰り返しがみられ硬直化していた。
 それに改革の動き、また自分で採算を考えねばならない状況になりつつあった。
 それまでは劇場名で見るものをを選んでいたが、これから演出家の名前で見に行くことが
 起こり始めた。公営劇団でしか舞台が作られていなかったのが、自分で金を集めてつくり
 はじめた。民営劇場がこのころ誕生、フリーランスプロデューサも数年で誕生。
 2001年に北京で大学演劇祭を開催。
 2000年前後に制作会社ができた、香港から文化吸収。台湾の影響も大きかった。
 海外文化の影響があった一方、中国伝統劇の手法を積極的に取り入れる作品が増えた。
 「夏の記憶」天真人民芸術劇院(ロープに絡まって引っぱりあう、水浴びをする、見得を切る画面、、)
 舞台は農村、夫との関係がさめてしまい、夫は都会に働きにいったまま帰らない、
 そこで農村に働きにきた学生と恋。
 「非常麻雀」中国実験話劇院、時代も場所も設定がなく、ただ文革を生きてきたというのが
 わかる。学はない、明日はなにをしようといいながら麻雀にあけくれる。3人で4人目が
 くるのを待ちながら話にあけくれる。4人目はこなかったのか誰がこなかったのかを
 観客にゆだねる作品。ゴドー待ちなのか?こないことがわかっている、そこがゴドー
 とは違うのだ、ということらしい。
 京劇でも伝統的な枠におさまらない作品を作るようになった。
 ムー・グィイン、北京李六乙戯劇工作室、李六乙作・演出。女傑三部作の第一作。
 京劇なのか現代劇なのかいったいなんなのだ?と北京で話題になった作品。
 (ビデオを見た限り、私の目には京劇としか見えないのだけれど、かなり面白そう)
 「生死の場」中国実験話劇院、ティエン・チンシン脚本・演出、ビジュアルな演出、
  色彩豊か、シンプルなセットで効果的な舞台を作る。日本語化されている。
 ここまでは、すべて北京における制作。

 上海では2000年前後でホワイトカラー層がでてきた。日本と同じでストレスたまって
 いてすかっとする作品がみたいというニーズが強かった。ホワイトカラー層を描いた
 作品がいろいろできてきた。
 ヒットメーカー ユィ・ロンジュン(英語名をニック・ユー)は マーケティング
 の部署にいたが、プライベートでほんを書いてみたらうれてしまった。71年生まれ。
 「www.com」上海話劇芸術センター、 夫婦なのにネット経由でしかコミュニケー
  ションできないという物語。日本では東演が日中上演でプロジェクトを組み、
  日本版、中国版が上演されている。晩成書房「中国現代戯曲集」4に収録。

 2000年ごろから作品再演を繰り返すことが多くなり、ミュージカルを
 取り入れたものなど、全体的には商業的なものがふえている。
 公営も独立採算を求められてきて、昔のようにチケット売れなくてもよい、ということは
 言っていられない。昔は周りを見ると99%がチケット貰ってきた人だったという
 ことがあった最近はそういう体制をあらためようとしている。
 俳優のつてをたよってチケットをもらおうとしてもだめになりつつある。
 採算重視、商業化、大型化、売れ線つくりの方向に向かっている。

・最近の傾向
 採算重視、大きくないとチケットは売れない、大型化商業化、名作の全国巡演が進んでいる
 アマチュア(専門の養成機関を経ていない者)演劇人の台頭、視点の斬新さで勝負。
 都会の中であえぎながら生きていく自分たちの今の感覚を描く。
 彼らは自分たちでなんとか場を見つけねばならない。
 作り手・観客ともに改革開放後の豊かな時代に育った新世代、エリートサラリーマンや
 自営業のニューリッチ層が台頭。年齢が上になると、芸術とはかくあるべしという観念がある。
 時間が前後する作品は、年寄りが受け入れがたい。小劇場は何をやっているのか、あまり
 にも幼稚だと見るひともいるのではないか。若者は怖いもの知らず、自分たちが得た金を
 使って制作している。
 「10人の夜」菊池領子・グーレイ、日本では二面に客席、中国は公共劇場なのでどうして
 も額縁式舞台となり演出やりなおした。日本語上演で中国語字幕、北京では字幕をみただ
 けで笑いが出たが、シンセンでは東京と同じような反応でクール。
 上演場所も多様化、孟京輝(モン・ジンホイ)による蜂巣(フンチャオ)劇場など演出家が
 自分で劇場を持つうになった。また北京9個劇場(ナインシアター)のように公民館を
 劇場として整備してアマチュア劇団に提供するという例もあり。かなりの数の上演がなさ
 れている。本業の稼ぎを投資して運営する新たな民間劇場もある。プートンの中にある
 カフェのような劇場、パンハオ劇場。上海では郊外の倉庫を改装した稽古場兼上演スペースの
 下河迷倉(ダウンストリームガレージ)など。
 ファッションに関しても外部協力を得ているので、ファッショナブルな都会の衣装を
 使った作品が多い
 「恋するサイ」中国実験話劇院、リャオ・イーメイ作、モン・ジンホイ演出。
  動物園のサイの飼育係の男性と女性との恋愛。都会で生きる寂しさ、男性が女性を一生
  懸命愛するが女性は自分勝手、現代人の孤独感、信頼関係の危うさを描いた作品。
  全国縦断公演中、若者の共感をえる。


☆日中演劇交流の可能性

交流目的をよく考えること、自分でよく整理したのちにチャンネルも選択すべき。
職業演劇人の意識が国によって異なる。お互いのずれをわかっていればよいのだが、現場に
なるとどうも意志疎通がうまくいかない場合がある。社会の状況が中国と日本で違う。
中国は大きなことを決めるだけ、細かくことを最初から決める日本との違いはある。
また劇場の予約時期、日本はかなり早いが中国はぎりぎりでもなんとかなる場合がある。
中国は民間に対する助成金がない。中止のリスクの考え方も違う。
旅行ビザでいけばいいですから!と現地側は言うことがあるが、それはビザ取得という
仕事を減らすためのことがある。また中国人が来日するにはビザが必要。
インディペンデント系と許可の取り方がよくわからないということで日本側主導でいかない
とビザが間にあわないということが起きる。
かつては物価の差が大きかったので日本側が丸抱えでやっていた。
中国側と負担を案分してくれないと今後は続かないだろう。
かつて中国には著作権の意識はなかったが、最近は権利意識を持ち始めている。
しかしそれと日本側の著作権を尊重するということとは話が別。
日本が資金を出す、中国人が演出、俳優など人的リソースを出すという形で舞台を作り
あげたときなど、中国人が勝手に再演してしまうことがある。著作権はどうなっているのか?
いろいろトラブルの元になることがあるので注意が必要。

☆質疑応答

Q:日本の場合だと、ヨーロッパの演劇と刺激をうけたとかすごくあると思うけれど、中国の場合、
ブレヒトやベケットは上演されたのか?
A:そういった作品は上演されている。80年代あたりでも、但し小劇場でもアンチ政府ではない。
そのころ個はまだ希薄、社会主義に関する反発とかとらえてやっていた。一人っ子政策79年から
はじまったので80年代以降は物が豊かで一人っ子で思いのままに生きている。西洋人の感覚に
近い物がある。昔はそういうものを上演しても観客に受け入れられなかった。

Q:演劇と雑技の交流はないのか
A:曲芸が一場面に出るような舞台であれば少々はいることもあるがその程度。雑技の方が
ストーリー性を取り入れてきているのでそちらからみるとまた違ったことがあるかもしれない。

Q:チケット代は?
A:昔は劇場も企業もは国の傘下にあった。職場が中心の生活だった。
企業にチケットを渡せば皆にわたった、チケットを買わなくても上司の伝手を待てばよい。
現在大きな劇場の場合は、1万円。外国作品だともうちょっとあがる。一番下が1000円くらいの
席まである。小劇場の芝居、よい席で3000円ー3500円、安いのは1000円。
大卒の給料で3000元くらい。5万円くらいの人が1万円のチケットを買うとなると、2割?

Q:最初に日本の新劇を見て始まったのであれば、日本の新劇はどういうふうに思われているのか?
A:日本でも伝統劇に対して新劇と言われた。今の時代から見ると新劇て古いんじゃない?
さらに先にいっているから新劇が新しく見えるということもある。
大型の額縁の舞台でなんとなく大型なものがうけるのではないか。

Q:日本から行くときどういうものがよいのか?
ちょっとしっかりしたものがよいかもしれない。まれびとの会が新作を持っていっている。
ビジュアルで身体表現的要素や台詞もとおらない作品、
非常にいいと反応する人とまたくわからないというひとと評価がわかれる
人によって様々。

Q:民族はどういうものがはいっているのか?

A:地方で状況が違うだろう。現代劇は劇団があるとはいえ、少数民族のエリアのものが北京に
くるのか?民族差別などの素材を扱っているか?というとなかなか勇気を持って扱っているのは
聞いたことはない。ダンスになるとそれぞれのエリアで異なる。

Q:役者がどうやって生活できているのか?
A:所属先の給料は多くない、ホワイトカラー層なみ。
召集がかかったときは拘束されるが、それ以外は映画やTVにでることができる。だいぶギャラが良い。
今は全部の役者がよいギャラをもらうわけではない。稽古中、交通費がでて食事がでる。向こうの
役者をやっていたほうが日本より金がたまる。役者の等級がある。
公営劇団は、国のおすみつきがある。

Q:台本に検閲は?
A:ある。台本を出さないとチケットを売る公演はできない。でもだいぶ緩やかにはなっている。
字幕にチェックがはいったこともある。
アマチュアの劇団であっても、チケットを売らない内部上演ならば検閲はないが、チケットを売る
ことになると検閲がかかる。


☆参考URL
資料より チケット購入サイト
 http://www.piao.com.cn/shouye.asp
http://www.288.com.cn

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